出荷の前に、
一度よそへ旅に出とった話
福岡で、中小・小規模の会社のIT・AI導入を手伝っています。大手食品メーカーを経て、いまは創業50年を超える食品メーカーで経営戦略をつかさどっています。老舗なので、旧態依然としたところが多い。これはその中でも、いちばん根が深かった話です。
うちの冷凍品には、長いこと旅程がありました。
↓
トラックに積んで、外の委託倉庫へ
↓
受注が入る 「◯◯が要る」
↓
外の倉庫から、社内の冷凍庫へ戻す
↓
出荷
作ったものは、まず外へ出ます。注文が入ってから、また戻してくる。10ケースでも、2ケースでも、同じ道を通ります。必ず一度、外に出る。
これが何十年も続いていました。誰も止めませんでした。そもそも、誰もこの旅程を知らんかったからです。
地図を持っていたのは一人だけ
どこに何がいくつあるか。分かるのは一人だけでした。半分は紙、半分はその人の手元の記録。他の人が見て分かるものではありません。
聞けば必ず答えが返ってくる。正確に返ってくる。だから誰も困りませんでした。
「あれ、外に何ケース残っとった?」
「3です」
3なんです。合っとるんです。合っとるから、誰も中を見んかった。
会社としては、見過ごせなかった
ただ、その人の残業は月100時間に届く月がありました。本人は「これでいい」と言う。会社はそうはいきません。
属人化は、本人が困っていないときがいちばん危ない。
仕組みにする方針で動きました。まずはPCと記録を、会社の管理下に置くところから。
その方針を出したあと、その人は会社を離れました。
よくある話だと思います。長く一人で抱えてきた仕事に、外から手が入る。面白くはないでしょう。そして、残された側は「回らんくなる」と思う。
私もそう思っていました。
開けてみたら、旅行代理店やった
回らんくなりませんでした。
それどころか、中が見えるようになって、すぐ分かりました。冒頭の旅程です。
外の倉庫は、置き場所として要ったのではありませんでした。一度そこを通すのが手順になっていただけです。誰かが悪意でやったわけでもない。昔そうしていた理由が、とっくに無くなっていただけです。
そのあいだ、うちは運賃と保管料を、旅費として払い続けていました。
どう変えたか
- Excelから始めました。いきなりシステムは作っていません
- ダイレクト出荷を増やし、外の倉庫はできるだけ通さない形に
- 在庫は日付別。誰でも見られる
- いまは受注と連動させて、さらに無駄を削っています
- 誰でも冷凍の作業ができます
物流費は年単位で大きく下がりました。新しく稼いだのではありません。払わんでいいものを、払うのをやめただけです。
たいそうなものは、入れとりません
システムと書きましたが、すごいものではありません。ブラウザで開くだけのものを、社内に置いたNASの上で動かしています。
そのNASも、家庭用です。家電量販店で買えるやつです。
専用のサーバーも、月額のサービスも契約しとりません。社内のどのPCからでも、いつでも、誰でも見られる。要るのはそれだけでした。
属人化は、優しさの顔をして来る
手放させたら会社が困る、と思ってしまいます。だから、そのままにする。頼りにしている、とも言えます。
でも、その人が抱えている限り、中身は誰にも見えません。見えないものは、直せません。
抜けられたら終わりだ、と思っていました。
抜けられて、やっと始まりました。
怖いのは、開ける前だけです。
ULTIMA(アルティマ)/柴﨑 達也
福岡・北九州・久留米・八女・筑後および近県。オンラインも可。
無料相談60分では、その場でいちばん小さいものを1つ作って、目の前で動かしてお見せします。